読んだ
本の情報
- タイトル:拡張リーン 世界が認めた日本の生産方式をデジタルで進化させる方法論
- 著者:ナタン・リンダー、トロン・アーネ・アンドハイム
- 出版社:日刊工業新聞社
- 出版年:2026
- ジャンル:科学・テクノロジー
- 参照 URL:https://pub.nikkan.co.jp/book/b10153278.html
本の内容と気になったポイント
製造業の本。英題は AUGMENTED LEAN A Human-Centric Framework for Managing Frontline Operations。拡張リーン(augmented lean)という概念を実現させるためのスキームなどについて解説されている。従来のリーンではヒトが改善サイクルを回すというアナログなものに対し、拡張リーンはデジタル技術によりヒトをエンパワメントして、改善サイクルを回すという、デジタル技術の活用を念頭においた概念になっている。
拡張リーンは人間が製造プロセスにいて、それをデジタル技術で拡張するアプローチをとる。インダストリー5.0 とか 6.0 などと呼んでいる。インダストリー4.0 はいわゆる工場の無人化、オートメーション化を指している。著者の一人は Tulip という製造業向けの DX を行う企業の共同創業者で、会社に依った事例や経験則が載っている。ある程度ポジショントークもあるかとも感じるが、製造業的にはこういう流れがあるらしい。
気になったところ
- なぜオートメーション化とは違う方向になったか。オートメーションは完全に自動化されたプロセスを最適化することになるため、それに対し、継続的な(現場部分の)製造プロセスを改善していく、という方向性の拡張リーンを提唱している。マシンなど周辺技術も進化するため逐次適応しやすい形がよかったのだろうか。本書ではインダストリー4.0 は決定論的である、と書いていた。
あと気になった部分引用。リーンでもアジャイルでも課題解決自体の難しさは変わらないらしい。
調査プロセスのごく初期の段階で、解決策を性急に求める本能として、そうなりがちなことは理解できる。解決策が必要なのは、私たちが業務上の課題を抱えているからだ。むしろ何が問題か、問題がどのように受け止められるかのか、それはいつ起こるのかということを考え、可能な限りいろいろな面から問題を深く掘り下げる必要がある。問題の本質を十分してこそ、初めて解決策が見つかる期待が持てる。逆に解決策を見つけようとして焦ると、問題の核心に追れず、問題自体が繰り返し続くことになる。
産業プロセスにおける運用上の課題が、ボトルネックとして覇在化することもある。そのため、組立ラインの再稼働やサプライチェーンでの供給不足の補充というように、即座に対処する必要があるが、課題がこれほど単純であることはまずない。問題の原因は、より上位のレベルにあることが多い。こうした根本の部分に手をつけない限り、問題は繰り返し起こることになる。
時には問題が非常に単純な場合もあり、さまざまな言い訳を重ねて物事を必要以上に複雑にすべきではない。そのような場合、プロセスの途中で修正が非常に簡単ながら、些細な障害が存在するケースもある。しかし、これらの障害が複雑に絡み合うと問題が生じる。こうした課題の多くは品質についてであり、もうひとつ作業の切り替えも課題となる。
136p より
まとめ・感想
拡張リーン実現のために必要な技術と能力の本。管理職向けだろうか。要するにノーコードツールを使ってプロセス改善を行うための教育や設備、認知と判断レベル、範囲を広げさせるには、何が必要となるか、というのがまとめてある。拡張リーンに至ったのは、オートメーションしたシステムに(ヒトやマシンを)従わせるコストよりも、その分を現場(ヒト)に権限委譲(エンパワー)する方がよくすすむという趣旨に至ったのかな。ヒトの頭脳の消耗は限界が測れないから、いくらでも精神的負荷の皺寄せを行うことができてしまうなって思った。
多分、この次は改善プロセス自体の磨き込みに向けたドメインの理解、エコシステムの把握などが必要、といった考えに及ぶのだろうか。
製造業は素人なのでなんとも言えないが、ヒトと業務プロセスの最適な関係を決めるのはまだ早そう。直近の流行りで言うと、改善の会話相手がヒトから AI などになることで、全体的にプロセスを細かく抜き出して形式化(現状のインターフェースである言語化)ができないとヒトの役割としては厳しい、という世界観になるのだろうか。人類総中間管理職化。
現場レベルのノーコード、オフィスワーク版がキントーンだと思うので、そちらの事例とかも調べてみようかと思った。